発達障害の人が嘘をつかないと思われてしまう理由

発達障害の人、特に自閉症スペクトラムと言われている人は、嘘をつかないというイメージを持たれていませんか?
特性としてよく例に挙げられる、思ったことをそのまま言ってしまう、というあたりから嘘をつかないというイメージになっているのかなと推測します。
例えば、太っている人に向かって、「太っているね」と言ったり、外見や髪型、服装などの見た目で自分が変だと思ったら、「変だね」とストレートに言ってしまう。
これを正直に本当のことを言う、と解釈し、反対の意味で嘘をつかない、という解釈になっているような気がしています。
なんとなくこの感じ、わかるんですよね。
嘘をつく、と言っても相手のことを察することが難しい特性があるので、本当のことしか言わないような気がしてしまいます。
または、嘘をつく、というスキルがなかったり、発達が遅れているので嘘をつくということを知らなかったり、という可能性もあるでしょう。
しかし「発達障害の人」=「嘘をつかない」という式は違っていると思います。長男も、しっかりと嘘はつきますよ。バレバレな嘘から実に巧妙な嘘まで、顔色1つ変えずに嘘をつきます。

自分の利益のためにつく嘘と、他人を傷つけないための嘘

そもそも「嘘をつく」ということを考えてみた場合、まず事実と事実ではない架空の出来事の2つが必要になりますね。
架空の出来事が妄想なのか、過去の記憶なのか、意図的に作り上げられたものなのか、いろんなパターンがあると思いますが、自分が得するため、または自分を守るための嘘と、他人を傷つけないため、または喜ばせるための嘘の2種類があると思います。
得する嘘と守る嘘は、発達障害の人でもつこうと思えば嘘をつけると思います。自分軸で考えられることなので、やろうと思えば出来る可能性はあるでしょう。長男の嘘は、こちらのタイプです。
しかし、他人を傷つけないための嘘、喜ばせるための嘘は、他人軸で物事を考えなければいけないので、難しいのではないかと考えています。
「太っているね」「変だね」というのも、自分がそう思ったから言っただけなので、逆に何で思っていることを言ったらいけないのだろうと不思議に思ってしまうかもしれません。
例えば、長男の場合、太っている人に「太ってるね」とは言わないそうです。体型のことは言わない方がいいと今は学習しているからです。小さい時から療育を続けてきていますから、少し知識がついていますね。
しかし、洋服が変だと思った人には「変だね」と言うそうです。理由は変だと思ったから。そして、相手の人がムッとした顔をしたら、知らないフリをして逃げるそうです。
‘何かいけないことを言ってしまった’とは思うそうなのですが、何が悪いのかはわからないそうです。
ちなみに相手に確認しに行くこともしないそうです。なんとなく怒られそうだから、というのが理由です。
ということは、相手の表情から何かを感じる取ることはできても、なぜ相手がムッとしてしまったのかはわからない、そうなんです。そして、相手に確認もしないので、わからないまま、また同じことをしてしまうのですね。
さらに、長男は、相手を喜ばせる嘘は、バレてしまって嘘をつき続けることはできないそうです。
例えば、家族の誕生日に、当人に内緒でこっそり誕生日プレゼントを買いにいって隠しておいたのに、隠した場所を喋ってしまったり、プレゼントの中身を開ける前に喋っちゃったりしますね。
「なんでかわからないけど、バレちゃう」と長男は言いますが、あなたが喋ってしまってますよ、と何度教えても我慢できずに喋ってしまうようです。
もちろん、他人に関係する、いわば「身に付けておいた方がいい嘘」を難なくこなせる人もいるでしょうが、長男を含む発達障害の人の苦手なところかなと思います。

約束していたことが守られないと嘘をついたと思い込んでしまう

また、他人が関係することで長男の中で「嘘」だと思ってしまうことがあります。
それは、約束していたのに、状況によって急な予定変更があった場合、「嘘をつかれた」と勘違いをしてしまいます。
これは長男と次男の間でよくおこる出来事なのですが、例えば、2人で2つ遊ぶ約束をしていたとします。そして、1つ目の遊びが楽しすぎて夜寝る時間になってしまいました。次男は「寝る時間だから2つ目の遊びは明日にしよう」と提案しますが、長男は「2つ遊ぶと約束したのに、どうして嘘をつくんだ」と怒って責め始めました。しかし次男は「もう眠いから寝るね」と先に寝てしまいます。そうなると「次男は嘘をついた。嘘をつくことはいけないことなのにどうして嘘をついたんだ。どうしてなんだ。」と考え続けること2時間。夜11時過ぎまで考え込んでいました。
例え話にしましたが、実際にあった出来事です。
長男が、急な予定変更が苦手なことはわかっていましたから、私は必ず事前に予告をするのですが、当然ながら次男はそんな配慮はしません。
寝ようと思ったから寝ようと言っただけで、普通なら「そうしよう」となるところが、長男の場合は次男が嘘をついたと責めたててしまうのです。
嘘をついたのではないのですが、今でも嘘だと思ってしまうあたり、やはり独特の思考回路なんでしょうね。

嘘は成長の証

何はともあれ、嘘をつけるということは、ある意味成長しているということです。
幼少期は長男が嘘をついていると感じたことはありませんでした。
なので、初めて長男が嘘をついた時、やっと次男のように成長が追い付いてきたのだと正直ホッとしたのを覚えています。
嘘がつけるということは、正しいことがわかっていること。
そして、私をだますためにあれこれとバレないと思われる状況を考える。
自分が得するだけの嘘、相手をだますための嘘はいけないと思いますが、自分を守るための嘘(主に見栄を張りたい、プライドを守りたい)は少しくらい許してもいいのではないかなと思っています。
逆に、他人を傷つけないため、喜ばれるための嘘はぜひスキルとして身に付けてほしいです。
発達障害の人にとって、協調性と呼ばれる部分に苦手なことがあると思うので、せめてこの「他人のための嘘」をスキルとして身に付け、イヤな思いをする機会が1つでも減ってくれたらいいなと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

2人の男の子を育てている主婦です。(現在小4と小1) 長男が発達障害のため、ちょっと変わった子育てをしています。 今年から次男が小学校に入ったので、少しずつ自分の時間が持てるようになりました。 そんな私のちょっと変わった子育てのお話を紹介致します。