しつけと暴力について、どこからが虐待?

幼児期や学童期の場合

幼児期や学童期になると、また少し複雑です。もう三十年前、私の兄の話になります。当時はしかられた子供が外に出されて、玄関前で泣いているなんて事は、わりと日常的にありました。ですから兄もたまにお仕置きとして家から閉め出されてしましたし、隣のお家の子供もたまに出されていました。

また兄は昔からイチゴがきらい。嫌いなら食べなくてもいいんじゃないかと思うんですが、父は折角買ったイチゴにまったく手をつけない兄に腹をたて、押さえ込んで無理やり口に押し込みました。そのせいか、兄は今でもイチゴは嫌いです。しかしこうしたことが虐待かというと、父も兄も、誰もそうだとは思っていないでしょう。

普段からの親子関係によっても変わる

一方で、私の知人は特別暴力を振るわれた訳ではないけれど、母親が執拗に自分の欠点を羅列し嘲笑し続けたことを、心理的虐待と捉えています。成長した子供が、自分は何か幼年期に大きなトラウマを抱えているかもしれないと思ったとき、幼いころにうけた暴力は仮にどの家庭にもあるような些細なものであっても、子供を苦しめる材料となることがあります。

つまり、ちょっとした暴力ひとつとっても虐待と捉えるかどうかは、子供がわの受け取りかたに依って違うと思うのです。そして子供の受け取り方は、日常的な親子関係に大きく左右されるのではないでしょうか。

子供が将来的にトラウマとしてかかえこんでしまいそうな身体的、肉体的暴力というのは、子供が自分の存在を否定してしまう類いのものです。もし叩かれたり罵られたりしても、自分という人間は愛されていると子供の方が実感できている親子関係が普段からあれば、子供の心理的ストレスはそう大きくないかもしれません。

ただ、多くの子供は親を守ろうとします。明らかな虐待を受けているのに、自分だけが悪くて、親は自分のためにやってくれていると思い込もうとします。悲しいことに、そう思わないと虐待されている自分を受け入れられないのかもしれません

しつけに暴力は必要?


ではそもそも、しつけのために叩いたりすることは必要でしょうか。うちでは長男は、結構パシパシ叩いていました。一人目で育児に余裕が持てなかったせいもあるのでしょうが、こら!と怒るとき言葉よりも先に手が出てしまい、その後言い聞かせるというようなしつけをよくしていました。

一方弟は、年がちょっと離れているせいもあって、つい甘くなってしまうので、そういえばお兄ちゃんの時ほど叩いていないなーと思います。今は長男もそうそう私をイライラさせることもなくなったので、最近は叩くことはほとんどありません。

ただよく叩かれた兄と叩かれた経験の少ない弟と比べると、喧嘩や遊びの時に兄の方が力加減が上手にできている気がします。もちろん現在の二人を比べても年が違うので当たり前ですが、兄が5歳だったころと比べると今の弟は、遊んでいてもつい力が入りすぎてしまうようです。

また、長男の時は危険なことをしたらすぐさま叩き「これで怪我したらもっともっと痛いんだよ!!」と叱っていました。そのせいかどうかはわかりませんが、何につけても慎重派です。そしてちょっとの怪我では平気な顔をしています。一方弟は怖いもの知らずなわりに、少しでも擦りむくとビービー泣くし、注射も逃げ出します。

痛みの記憶も、時に役に立つ

叩かれたらこのくらい痛い、というのを体感することも時には必要なのかもしれません。もっとも、兄弟で性格も異なりますから、一概には言えないでしょうけれども。今は取っ組み合いのけんかになる前に保育園や学校で大人の仲裁が入りますから、殴られる痛みを知る機会が減っているようにも思えますからね。

痛みの感覚はその怒られた時の記憶を強く刻みます。私が高校の時の家庭科の先生は、自分の子どもに「危険」を教えるためにわざとちょっとだけ痛い目に合わせたといいます。アイロンは熱いと教えるために低温にしてちょっとだけ触らせるとか、怪我にならない程度に「痛い=危険」の記憶を刷り込むのだそうです。

なにか繰り返してはいけないような悪いことをした時、怪我をしない程度に叩きその後で理由を説明して納得させれば、同じことで怒られることは少なくなっていくと思います。ただ叩きっぱなしで理由の説明がないと、子供は自分の行為と叩かれた痛みに関係があると思えず、ただ痛みだけの記憶が残ってしまいます。

子供は大好きなお母さんに怒られたり叩かれたりするのは、とても怖いし悲しいのです。理由をちゃんと聞かせることは大切です。たとえ小さくてあまり良くわからないのではと思っても、なんとなくでもその原因となった行為に悪い所があったんだわかるだけでも違うと思います。

ただ原因となる子供の行為、叩くことでのしつけ、その説明の3点は、あまり間に時間が開かない方が良いかと思います。子供が小さければ小さいほど、時間が空いてしまうとその関係性が分からなくなってしまうものです。また、特別な理由なく叩いてしまったら、子供は悪くないということをきちんと伝えて謝りましょう。お母さんは完璧でなくていいと思うのです。ちゃんとお話しした後は、きちんと抱きしめて大好きだよと伝えてあげてください。

子どもに暴力を振るってしまうと悩んだら

自分はわが子を虐待してしまっているかもしれない、と悩むお母さんは案外多いようです。子供に思わず暴力を振るってしまったとき、お母さんは後悔と自己嫌悪でいっぱいになります。一方で、子供の為に注意するときも「絶対怒らない」と決めていたお母さんがノイローゼになってしまったという話も聞いたことがあります。

もし虐待のことで悩んでいたら、第三者である誰かに相談するのが一番です。ほかのお母さんから「うちでもそんなこと、しょっちゅうだよ~」と返事を聞いて安心したら、イライラが消えて子育てが楽になるかもしれません。専門家や、子育てに関する相談所などでもよいでしょう。

専門家が言うには、もっとも危惧すべきなのは誰にも相談できない方なのだそうです。自分が虐待をしているという事実を自分でも認めたくなくて、周囲にも知られまいとし、子供に口止めしていたりする場合の方が深刻です。

虐待してしまっているのかも、自分は最低の母親なのかもと思いながら毎日を過ごすのは、お母さんも子供もつら過ぎます。子供はお母さんが大好きなのですから、完璧なお母さんを演じようとせずに、ある程度子どもと同じ土俵に立って怒ったり泣いたりして良いと私は思っています。

子育てで一番大事なのは、なによりお母さん自身が笑顔で幸せそうにしていること。お母さんが幸せそうだと、子供は自分の存在に肯定感を持てると思うんです。だからあれこれ悩みすぎずに、周囲の助けを借りながら楽しく子育てしていきたいものですね。

ABOUTこの記事をかいた人

30代後半、10歳と5歳の男の子の母です。 平日は、子供を学童と保育園に預けてパートタイマーとして働いています。慌ただしいながらも頑張りすぎず、気楽で楽しい育児をモットーに、賑やかで幸せな日々を送っています。