発達障害児に必要な作業療法とは

長男は年長~小学3年の終わりまで、作業療法に通っていました。地元にある療育センターでやってもらっている療育の1つでした。
年長で今の場所に引っ越してくる前までは、療育には通っていたものの、医師の診断を受けていたわけではなく、集団でのグループ療育が主なものでした。
年長になり、就学前相談で医師の診断を取り、作業療法が始まりました。担当は穏やかそうな大きな体の療法士さんでした。
落ち着いた口調で長男の事をよく理解してくれた療法士さんに長男はとても心を開いていて、最後の1年間はキャッチボールをすることで(ドッチボールで)さらに絆を深めていきました。

作業療法とは何か

そもそも作業療法とは、生活に必要な作業に困難がある人の問題を見つけ、遊びや練習をサポートすることでよりよく生活できるようにするリハビリのようなものです。
専門の療法士さんが、カウンセリングや実際に接する事で原因になっているものを見つけてくれ、作業の中で一緒に解決法を探ってくれます。
発達障害の人や子供達には、感覚的な捉え方の違いや、運動能力の不器用さから生活に支障がでてくることが多いため、作業療法に通っている人は多いと思います。
子供の作業療法であれば、遊びながら「できる」を増やしていけるので、遊びにきていると思っていて、出来ないことをやらされているという感覚はないでしょう。
特に発達障害児は、理由がわからずに怒られてしまうことや、なぜかわからないけれど苦手なことが多いと感じとって自己肯定感が下がっている子が多いため、作業療法はある意味、自分をそのまま受け止めてくれる場所として安心できるものになっているかもしれません。
同時に、親に対しての子供との接し方や配慮の仕方、見え方感じ方の違いを通訳のように教えてくれ、親の心の面のサポートにもなります。
なかなか本当の意味での親の困りごとを理解してくれる人が日常にいない場合、作業療法士が心の支えになることもあるでしょう。

作業療法で現状を知る

作業療法では、親や本人からのカウンセリングで、困りごとを把握し、その元になっているところの現状を教えてくれます。
長男の場合、作業療法を始めたばかりの頃に私が話したことは、

  • 鉄棒の前回りすらできなかったこと
  • 自転車の後ろに乗せるとカーブで自転車が傾くたびに長男が怖いとギャーギャー騒いでいたこと
  • ジャンプで飛び降りると、足で着地するのではなく必ず横に1回転してお尻で着地すること

このことから、体幹がうまく機能していないことを原因とし、「体幹を使って体のバランスを取ることができる」ということを教えてくれました。
バランスボールやサンドバックのようなポールを使い、骨盤を動かせばバランスが取れるという訓練をすることで、始めは飛べなかったトランポリンが飛べるようになり、次第に体が傾いても騒がなくなっていきました。体幹を鍛える訓練は2年近く続いたと思います。その後の縄跳びや自転車、走る、蹴る、投げる、という動きの他に、しゃがむ、その場で飛ぶ、回るなど日常の基本的な動きにまでつながっていきました。

作業療法で変わっていたこと

作業療法に通うようになって変わっていったことは、私が長男の発達障害への理解が意識出来るようになっていったということでした。
本やネットで調べて情報を知識として理解しているつもりではいても、実際に長男の感じ方や感覚の違いを長男が伝えられなかったので、私もよくわかりませんでした。
憶測で、こういうことだろうと予想を立てても、実際に私が思っていることと長男の感じ方が同じかどうかはわかりません。
しかし、作業療法士さんが間に入って、通訳をしてくれることで発達障害であるということ、発達が遅れているということ、神経の統括が取れていないということがどういうことなのかが少しずるではありますが、わかるようになってきました。
鉄棒で前回りをしようとしても、体が傾くとギャーと叫んで降りてしまう長男に、つかまっていれば大丈夫なのに。と思っていましたし、自転車が傾いても転ばないって思ってました。ジャンプだって、足で着地出来るでしょ、くらいに思っていたので、その本当の意味も原因もわからなかったし、出来ないのではないと思っていました。
長男本人も、周りのお友達は出来るのに、なぜ自分は出来ないのだろうと、他の子達との違いを疑問に思うようになっていましたが、出来なかったからと言って特に困っていたわけではなかったので、私もそのうち出来るだろうと思っていました。
こういう本人以外の人の思い込みが、その後、少しずつ本人を追いつめていってしまい、自分は出来ないんだ、ダメな人間なんだと自己肯定感を失っていく原因になっていくのは今になってわかることで、当時は本当に気づきもしなかったことでした。
長男は療法士さんと遊びながら楽しく、少しずつクリアしていくことで自信もついていきましたし、原因をフィードバックされることで自分のことを知るきっかけになっていったと思います。
作業療法に通い始めた当初、箸がうまく使えないことに対処してくれた療法士さんは、長男は親指・人差し指・中指の3本だけですべての手の動きをカバーしようとしていて、薬指・小指の存在に気付いてない、と教えてくれたことがありました。
その日、薬指と小指を動かす訓練をした長男が、家に帰ってきてからしきりに自分の薬指と小指を眺めては動かしていた様子を見て、本当に薬指と小指の存在に気付いていなかったのだと、半ば信じがたいことではありますが、信じることができました。
作業療法が終わってしまった今、今でも体幹の悪さも手先の不器用さもありますが、上手くいかないことの原因に気付くきっかけを作ってくれた初めての体験が作業療法でしたので、行く機会を持たせていただくことが出来たことをとても感謝しています。
作業療法との出会いがなかったら、今でもわからないことがたくさんあったでしょう。
療育に行く場所によって、与えられる療育のチャンスが違う、ということを知る機会にもなりましたし、出来るだけ多くの方に機会が与えられることを望んでいます。

ABOUTこの記事をかいた人

2人の男の子を育てている主婦です。(現在小4と小1) 長男が発達障害のため、ちょっと変わった子育てをしています。 今年から次男が小学校に入ったので、少しずつ自分の時間が持てるようになりました。 そんな私のちょっと変わった子育てのお話を紹介致します。