目の前でいじめを受けて苦しんでいるわが子を見ていると、理不尽で不当な扱いをして来る相手に対して、わが子と同じ思いをさせてやりたい、同じように苦しみを味わわせてやりたいと思ってしまうのは、親の業なのかも知れません。しかし、ストレートに同じ仕返しをすることは、まず世の中に認めてもらえませんし、被害者でありながら周りからの批判を受けてしまうのは、更なる悲劇を生むだけです。
わが子のためにと仕返しすることだけを考えても、周りを巻き込んで泥沼化する可能性は高く、そこから抜けられなくなるばかりか、わが子を救うことすら出来なくなります。「仕返しをする」だけでは、完全に戦術ミスです。それでも相手に対して思い知らせてやりたいという気持ちを晴らすためには、何をすればよいのか、どう周りに理解を得ればよいのでしょうか。
学校や教師を敵に回さない
わが子のいじめに対して、ひたすら学校や担任に抗議をする親は多いと思います。しかし、この抗議が解決に繋がったという話しは、残念ながらあまり聞かれません。そのことからも判ることは、学校や担任を敵に回すのは得策ではないということです。学校と担任なしで解決に結びつけることは出来ないと言ってもよいかも知れません。
まず、冷静にいじめについて分析した上で、学校側に相談という形で話しを持ちかけます。ただ実態を伝えるだけでなく、相手の子どもに対するペナルティーや学校側の対応についての提案をします。その時に大切なのは、わが子のことだけでなく、他の子ども達のために、学校のために、この様なことがまた起こらないようにと伝えることです。わが子のことを教訓に、被害が拡大する前に学校に協力する、というスタンスを示すことで学校側からの協力を要請し、学校側を味方に付けることが出来れば戦術としては成功です。
同学年やクラスの保護者達に信頼を得る
学校だけではなく、保護者達にも同じ親としての信頼を得ることは、外堀を埋めることと同じようにジワジワと核心を突いていくことに繋がります。熱心で誠実な親という評価が、いじめが周知された時に、あのお母さんの子どもだからと保護者達から擁護されることも少なくないからです。そこから保護者の協力を得られれば、いじめを白日の下にさらすことにもなるでしょう。
学校の行事に参加し、協力し、保護者同士での良い関係を作る努力をすることで、あのお母さんの子どもなら助けてあげたいという心理も働くことでしょう。学校の中に、とにかく味方を増やすことが大事です。そうすることで他の子どもからの情報も取りやすく、親同士での情報も得やすくなるので、いじめられていることが周りにも伝わり、解決策を親達も考えるようになるはずです。味方を増やす戦術が成功することで、いじめていた子どもに対してのペナルティーも必須になるはずです。
わが子の将来のためにも親の姿を見せる
これらの戦術を確実にするために、努力しつつ学校とも交渉を続ける親の姿は、子どもにとっては親が自分のために戦ってくれているという、心の支えにもなるはずです。いじめられた子どもの心の傷は、決して消えることはありません。しかし、その親の姿も忘れることはないでしょう。それは、将来の支えにもなるのです。信頼出来る大人が側にいた記憶は、確実にその子を伸ばし、社会でもしっかり戦える大人に成長する糧になります。時間は気が遠くなる程に掛かるかも知れませんが、わが子が何事にも負けない大人に育った時こそ、戦術は成功したこととなり、仕返しも完了したと言えるかも知れません。