発達障害の長男の子育てを通して見つけたもの

直接的だったり間接的だったり、様々な声が届いてきました。
特急電車の次の停車駅までの時間が、いつも以上に長く感じました。

しばらくして次の駅に到着し、私は逃げるように電車から飛び出しました。
地獄のような時間を過ごした電車を見送ってふと気付くと、同じ電車に乗り合わせていたと思われるお婆さんが私にハンカチを差し出して立っていました。

そこでやっと気が付きました。
長男以上に自分の顔が涙でぐちゃぐちゃになっていたのです。

思いもよらない優しさに触れて決意

おかしな話ですが、最初はそのハンカチの意味がわかりませんでした。
長男を連れていて声をかけられる時はネガティブなことばかりだったため、長男が車内で泣き叫んでいたことを咎められるものだと思っていたのです。

しかしハンカチと共に掛けられた言葉は、とても温かく優しいものでした。

発達障害は目に見えない障害です。
そのため周囲からの理解が得にくく、誤解され傷つくことが日常になっていました。
無意識に人目を避けるようになり、次第に人との関わりが減り、人の優しさに触れる機会がなくなっていました。

このことがあって今まで目に入らなかった周囲の優しさを知ることができました。
そして発達障害の長男と共に前向きに生きていく決意をしたのです。

療育を始めてで広がった世界


それからは長男のためになることを模索しました。
同時に悩んで先延ばしにしていた療育施設への入所を決意しました。

施設には発達に不安を抱える親子が大勢通っており、自分と同じような境遇のママたちと出会うことができました。
ここでようやく孤独を感じず子育てができるようになりました。

また長男を通して障害や福祉を学び、今まで自分の知らなかった新しい世界を知ることができました。

障害があっても社会で立派に働く人たちがいることを知りました。
障害があるからこそ発揮される力がたくさんあることを知りました。
障害がわかり真っ暗になっていた未来が少しずつ色づいてきました。

幼児期に施設でたくさんのことを学び、親子共に大きく成長ができました。
そして小学生になるためのしっかりとした土台作りができました。
早期療育をして良かったと、今改めて思います。

長男を通して深まった家族の絆

長男が療育を初めてから、夫婦で子どもたちのことについて相談する機会が増えました。
近い未来のことだけでなく、成人したその先のことまで、何度も何度も話しました。

そのおかげで、今まで気が付くことができなかった長男の良いところもたくさん見つかりました。

人より幼い、けれどとても素直。
人より繊細、けれどとても心優しい。
人より不器用、けれどとても真面目で一生懸命。

そんな長所をこの先活かせるよう、家族で支えていきたいと思えるようになりました。

悲しいことに、子どもの障害がわかってうまくいかなくなった夫婦も少なくありません。
背負うには重すぎる問題、気持ちは理解できます。
しかし、どうか後ろを向かず明るい未来の話を夫婦でしてもらいたいです。
想像もつかないようなずっと先の話を、「こんな大人になってほしい」という夢を、たくさん話してほしいです。

そうしているうちに子どもはどんどん成長して、遠いと思っていた未来が気が付けば目の前に見えるようになります。
思っている以上に時間が経つのは早いですよ。

無理に受け入れようとしなくていいのです

「障害は個性と思えばいい」という言葉をよく聞きますが、日々苦悩しながら育てている身としてはそんな簡単に思えることではないと感じています。
愛しているがゆえに、長くわが子の障害を受け入れられず苦しむ方も多くいらっしゃいます。

無理に受け入れようとしなくてもいいと私は思います。

その子の性格に合わせて、その子の時間の流れに合わせて、進んだり戻ったりを繰り返してください。
そうして気が付いた時にはきっと、以前よりもほんの少し先に進んでいることと思います。
そして可能であれば心を閉ざさず外の世界を見て、周囲の優しさに触れてほしいです。

まだまだ続く子育て生活。
これからも日々迷いながら親子共に成長していきたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

京都在住。0歳から10歳までの歳の差三きょうだいを育てるフリーライター。長男は発達障害。一風変わった子育て経験を活かし、頑張るママたちのお役に立てるような記事を書いています。