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小さいときの恐怖

私には従妹が何人かおり、夏休みや正月になると従妹家族が集まり祖父の家にお泊りをするという習慣がありました。要は祖父の娘達が里帰りをするというだけなのですが。
従妹とは年に数回しか会えませんでしたが年齢が近いため久しぶりでも毎日一緒に遊んでいた友達のようにすぐに打ち解け、仲良く遊んだ思い出がたくさんあります。

楽しいからずっとずっと遊んでいたいという子供心は今も昔も変わらないと思いますが、もう寝なければならない時間になってもワイワイ騒いでいて、親に一喝され布団に入ってからもぼそぼそ話し続けては、次第に堪えきれなくなって大爆笑したりしまい、大人に寝ていないことがばれて再び怒られるということを繰り返していました。

そして業を煮やした大人達はついに言うのです。

「早く寝ないとガンゴがくるよ!!」

「ガンゴ」というのは恐ろしい妖怪のような幽霊のようなもので、この「ガンゴ」がこの地域で一般的なのか、祖父の家でだけ言われているものなのか定かではありません。
とにかく「ガンゴ」は恐ろしい化け物なのです。
それは寝ない子供や言いつけを守れない子供には容赦なく襲ってくるようでした。「ガンゴ」という響きも大人が言うと迫力があります。

大人が「ガンゴ」を発令すると私達は悲鳴をあげ、大人しく眠る努力をしたものです。

しつけによる作られた化け物

幼い私が恐れた「ガンゴ」の情報は乏しいものでした。

今の時代のようにネットやスマホで簡単に動画が見れたり、検索出来たりする環境はない時代です。本やテレビからの情報は今ほど自由に自分のタイミングで調べることは出来ない時代でした。「ガンゴ」の姿形は明確には語られませんでした。なぜなら「ガンゴ」は大人が怖がらせて早く子供を寝かせるために召喚した化け物なのです。事細かに説明している時間なんてありません。毎夜大人たちがチラチラと小出しに「ガンゴ」の情報をばらまき、子供は寝付く前にその姿を想像して身震いしながら布団に潜って「ガンゴ」に目を付けられないように息をひそめるのです。
多くは語られない為がゆえに余計に頭の中で育っていった斬首刑にあったような血みどろの化け物の恐怖は、夜になると突然現れて幼い私を――ひとりではトイレにいけないくらいに――怖がらせました。

もちろん、ある程度大きくなれば、「宇宙人がいるかもしれない」と同じレベルの確率で「妖怪やおばけはいるかもしれないけど、寝なくても襲ってこない」ということはわかってきます。
それでも、夜になると不気味に感じて「ガンゴが来るぞ!」と脅されると、「そんなの来るわけないし!」と思いながらも、大人しく寝ていました。

こういう体験をされた方は多いのではないでしょうか?
今思えばずいぶんと親の役にたつ便利な「化け物」だったと思います。

時代は変われど…

時代は移り変わり、妖怪は「ゲゲゲの鬼太郎」から「妖怪ウォッチ」に変貌しました。
さらに「観覧年齢制限」が強化されて今の子達は昔ほど、不意打ちで怖いものを触れる機会が減っているように感じます。昔はテレビで雑誌で本で、わりと怖い描写のものが身近にあったりしたと思います。
だから、親から「化け物」の話を聞くと容易に頭に思い浮かべることが可能だったと思いますが、今の子供達に同じ話をしても何を思い浮かべるのでしょうか?
私達が恐れ想像力で膨れ上がった妖怪を今の子達は想像できない可能性があります。お祭りなどで登場する「ナマハゲ」や「獅子舞」ですら遠いのではないかと思います。

今はスマホが当たり前のように普及したことにより、自分のスマホはなくとも親のスマホを使ってライン連携のゲームや、無料アプリで遊べるゲームや、知育関係の子供向けのアプリも増えてきているので、テレビよりもスマホでいい子で遊ぶお子さんも多いと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

一姫二太郎の2人の子供を育てているシングルマザーです。 育児と趣味も満喫したい能天気ライフを送っています。 失敗したり、たまにメソメソしてしまうこともあるけど、人生万事塞翁が馬のを座右の銘として元気に人生奮闘中です。