発達障害の認知が広がるにつれ、発達障害の診断名や字の表記が変わっていっていることにお気づきの方も多いでしょう。そして、何が何なのか、混乱してきている方もいると思います。今回はスペクトラムという考え方についての私の考えをお話ししていきたいと思います。
スペクトラムとは何なのか
発達障害の中で使われているスペクトラムとは、「連続体」を意味していると言われています。現在では、それまで広汎性発達障害と呼ばれていたものが最近では自閉症スペクトラムという言葉に変わってきていますね。要するに個人の特性が様々に連続してつながっており、上手い具合に線引きが出来ないためにスペクトラムという言葉で表現されているようです。
確かに、発達障害のチェック項目でも、似たような表記や全く当てはまっているとは思えないものもありますし、長男のように自閉症とADHD、学習障害(LD)と3つも診断名があると、様々なことが絡みあっていて、どの特性なのか判断に迷うことは多々あります。
私が感じたスペクトラムであるという認識
例えば、長男はまず筆算の桁をそろえられないという壁にぶつかりました。空間把握が苦手、指先の不器用さ、計算能力の高さのバランスが取れずに筆算が出来ませんでした。
暗算は出来るので、計算は出来るのですが、「筆算という形で紙に書く」という事は困難を極めました。
空間把握が苦手という事は自閉症や学習障害にみられる特性。ノートのどの場所にどのように書いたら1つの問題が収まるように書けるのかがわからず、桁が増えていくにつれ、答えが左に増えていき、狭いスペースに答えを書くうちに桁がずれて答えが間違っていました。また、繰り上がりを忘れないために一時的に書く数字も、長男には1つの数字に見えてしまい、倍の繰り上がりで計算していたこともありました。逆に小さく書いた数字を認識することを忘れ、備忘で描いた数字は備忘の役割を果たしていませんでした。
指先の不器用さも、自閉症や学習障害にみられる特性ですね。指先が不器用だと、鉛筆を持って正しい場所に正しく字を収めて書くことはとても大変です。マスの中に字を収めることに意識を集中しないと書けないので、計算に意識が集中できなくなってしまっていました。
そして最大の難関が、長男の計算スピードがとても速い事。とてもいいことじゃない!と思いますよね。レジより早いスピードでおつりの計算をして、レジのお姉さんを驚かせることは長男にとっては普通の事です。しかし、暗算のスピードが速すぎるがゆえに、その過程を超遅いスピードで記録していく係りの指が、うまく鉛筆を動かせない。指が答えを記録しようと頑張っている時に、目と頭は次の問題を計算してしまっていました。ADHDの忙しい頭の中では、次々に目に入る数字を計算しており、不注意も関係していて、一問に集中し続ける事が難しく、当然答えは次の問題の答えの一部。結果として答えはバツになってしまうのです。
答えが違うことに長男は納得がいきません。だって長男の頭の中で計算されている答えは合っているのですから。ただ、とっくに計算は終わっていて他の問題に気を取られているので、指が書いている字の事など構っていられないのです。
筆算1つをとっても、これだけの特性が重なりあってしまっているとどうにも切り分けが出来ないという意味がわかるような気がします。出来るためにはどうすればいいのか、どの特性から考えればいいのかを考えた時、複雑過ぎてよくわからなくなります。
頭と体は切り離されている
発達障害の人達の話によく出てくるのですが、頭の中(脳)と体は切り離されていると表現する人がいます。頭では解っているけれども、体を動かすという事はまた別。操作に近いと長男は表現します。ですので、頭で考えている事を操作するために変換してから始まるので遅れてしまう。頭の中では出来ているのに、体が違う動きをすると混乱してしまうようです。(もちろん、切り離されずに完全にリンクしている人もいます)
連続体として様々に絡み合っている特性は個人によってみんな違うので、頭と体の関係性も人それぞれ。訓練により、つながりやすくなったり、統括的にわかることもあるかもしれません。
私にとって診断名が何に変わろうと、長男には自閉傾向があり、ADHDの不注意・衝動性の問題があり、学習障害である事には変わりはありません。自閉症スペクトラムと表現するのか、広汎性発達障害と表現するのかなどもどちらでも良いです。
もしこれからまた学術的なところで名前が変わっていっても、発達障害の人達、支援する側の人達には同じ事。タイトルを書きかえただけで、真の目的は同じです。名前よりも特性をうまく表現していけたら、何の問題もないですよね。