家に居る時で、どんなに注意をしても止めない時、約束ごとを破った時、きつく叱らざるを得ない時、いかなる場合においても、私は子供を外に追い出すべきではないと思います。外に出すということは、家という家族が同じ空間で生活する場所から、少しの時間だけとは言え、子供を排除していたのと同じことだと考えるからです。そして、私が小学生の頃に「外に出された」ことを実際に経験し、それによって受けたショックと心の傷があるというのも、この考え方に影響していると思っています。
トラウマになってしまった私の体験
私が小学生の高学年位の時、夕方6時という帰宅の門限時間を守らず、一回だけ家に入れてもらえない時がありました。帰り道の空の暗さから、自分でもいつもより帰りが遅くなってしまったという自覚があり、小走りに帰って来て、玄関のドアを回した時に、ドアが開かないという焦りと恐怖は今でも覚えています。直ぐに玄関の前で大声で「お母さん!開けてー開けてー開けてー!帰って来たよ!帰って来たんだってば!」と叫び、ドアを思い切りがちゃがちゃと回したり、ドアを力の限り叩いたりしているうちに、このまま家に入れなかったらどうしようという不安が大きく込み上げて来たその時、ドアが開いて家の中から母が怖い顔をして「今、何時だと思っているの!」と一言だけ言い放ち、それからしばらく私と口をきいてくれませんでした。その時は「門限を破って悪かった」という反省の思いよりも「家に入れてもらえなかった焦りと恐怖」の方が勝り、母が私に伝えたかった「門限をきちんと守る」という事を感じることはできませんでした。それからしばらくは遊びに出掛ける前に、何度も何度も母に「もしちゃんと帰って来られなくなっても、カギはかけないでね」と念を押したり、遊びに出掛けていても、帰宅時間のことばかりが気になってしまったりと、心配が続き不安な日々を過ごしていました。私にとって完全にトラウマとなってしまっていました。この出来事は今となっても、玄関の照明の暗さや、ドアから見えた母の顔や、その時に叩いたドアの冷たさ、外に出されていた僅かな時間だけど長く感じた事など、その時の様子が鮮明に脳裏に焼き付けられています。家から追い出されるのも、家に入ることが出来ないのも、家という空間から排除される事として同じ事だと思います。
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