大人への入り口に辿り着いた長男
我が家の長男は、中学1年生です。多感なお年頃、ちょっとしたことから長男と言い合いになることも増えました・・・。
ちょっとしんどい日もあります。でも、これが自然な成長過程なんだろなぁと、引いて見たり、時には押してみたり。
長男を見ていると『思春期になると、やっぱり違うんだなぁ・・・』と感じることも多くなりましたね。
例えば、寝ぐせが気になり、登校前に髪を濡らしてドライヤーで乾かすようになったんです!小学生の頃なんて、鏡で自分を見ませんでしたから、私に「寝ぐせ、凄いぞー!」と言われたってそのまま学校へ行っちゃいます・・・。気にならないんでしょうねぇ。ある意味アートなヘアスタイルの日もありましたよ!
『中1ギャップ』と言う言葉があります。周りとの人間関係や学習スタイルの変化(教科ごとに先生が違う、科目が増えるなど)などによる生活環境が一変し、それに合わせるので精一杯な時期ですよね・・・。
私にも経験があります、中1ギャップ・・・。同級生が40人しかいない状況で中学へ。当時は、1クラス40人学級でしたから、同じ小学校出身の子がクラスに6人ほどしかいないんですね。
周りを見渡せば、知らない子たちばかり・・・。すぐに打ち解けましたが、初めは不安でした。この中1ギャップのせいだと思われますが、IBS(過敏性腸症候群)を発症してしまいます・・・。
私のように、中1ギャップが原因で発症する場合が多いようですね。中学、高校とこのIBSには、本当に苦しめられました・・・。
思春期外来って、どんなところ・・・?
長男は、人と上手く関わるということが苦手です。自分の世界観を持っている子で、本がとにかく大好き。本を買っても買っても、すぐに読んでしまうので・・・もう、追い付きません・・・。
将来は、図書館に勤めたら幸せなんじゃないかな?と、私が本気で考えるくらいの『本の虫』なのです。
保育園の年長の頃、絵本を描くのが日課でしたね。毎日違う内容で、日に日にページ数が増えて行きました。
一番最初の読者はもちろん、お迎えに行く私!弟たちも、お兄ちゃんの描く絵本をとても楽しみにしていました。今でも、我が家のクローゼットで大切に保管してあるんですよ。
小学生になると『○○君は、発想が豊かですね!』と、先生方から声を掛けて頂くようになります。
ただ、その発想や表現は、大人には『素晴らしい』と評価されても、同級生目線から見てしまうと「何だコイツ、変なの!」となってしまうわけです。
空想したり、物語を書いたり一人の時間が好き、でも、友達とワイワイ楽しく過ごしたい気持ちもある。その狭間での葛藤が小学生時代は常にあって、中学生となった現在は更に大きくなり、簡単にはどけられない岩のようなものになってしまっています。
長男は『思春期外来』なるものに通い始めました。
そもそも『思春期外来』って何だろう?と思いますよね。まだ初診のみでして、思春期を迎え色んな心の変化や悩み、苦しみなどを抱えた子供たちが、少しでも楽になるようにアドバイスを受けたりする心療内科、という知識しかありません・・・。
お医者さんは、長男がどんなことに苦しんでいるのかをもっと知りたいと、暫く通うことになりました。
いじめ
周りとは違った一面を持つ長男に対し、小学4年生頃から暴力を含むいじめが始まりました。
当時、クラスの男の子たちはとても活発な子が多く(良い意味でもその逆の意味でも)先生が手を焼いているという噂を耳にしたことがあります。
6人の男の子たちから、代わる代わる暴力を・・・。担任の先生も学校も、いじめとは認めませんでした。長男が、上手く関われないことに原因の一端があるからと・・・。
それなら暴力を振るっても許されるの?そんな疑問が湧いてきます。
長男に非がないとは言いません。彼らの言い分を受け取れば、大いにあったのだろうと思います。
私は『うちの子に限って』という考えはなく、原因が長男にあるのならきちんと理解させ『ごめんなさい』が言える人にさせたいという思いで子育てをしています。
『やられたら、やり返せ』今はそんな時代ではありません。子供は男の子3人、でも私は殴る、蹴るということを兄弟間でもさせませんでした。
何か面白くないことがあった時に、それを暴力で解決して良いことには、絶対ならないと思っていたし、それを子供たちに植え付けるためにです。
でも、私の考えとは裏腹に、世の中は違っているんですね。学校側がいじめと認めないのをいいことに、彼らのいじめはその後も続くのでした・・・。
公立中には行かない!
いじめが発覚した4年生の終わり、長男の発した言葉が大きな転機となりました。
「僕は、○○中には行かない!」
学区内には、公立中と私立中が一つずつあります。特に何もなければ、クラス全員が公立中に進むわけです。
長男は、みんなと一緒に公立中に通うのは嫌だと、私立中の受験を決意します。
中学受験『中受』ですよね。驚きました・・・。私の中に、その選択肢には全くありませんでしたから。
でも、子供が望むのなら、一緒に頑張るか!ここから、長く険しい中学入試への戦いが始まるのでした。
大袈裟かもしれませんが、住んでいる地域が中学受験する環境になく、地元から私立へというお子さんは、ほんの数人程度。
長男の小学校では前例がなく、初めての受験生となったわけです。ですから、先輩ママさんから情報を得たいと思っても、誰にも聞けないかったんですね・・・。
もう、不安で一杯でしたよ・・・。でも、やると決めたからには!進むしかないですからね。
受験までにしたこと・・・塾に通い始める
受験のためにまずしたことは、塾に通わせることでした。
学校が休みの土曜日に、長男と二人で話を聞きに行くことになりました。面談まで数時間という時、事件が起こります・・・。
長男の頭を見て愕然としました・・・自分の髪を、バリカンでカットしてしまっていたのです。自分でするということは・・・とんでもない状況を、最悪の状況をご想像頂いて間違いないと思います・・・。
何で今日なの?怒りと言うか、悲しみと言うか・・・もう、私の頭の中はぐちゃぐちゃでしたね。
長男曰く「伸びてたから」と・・・。まだ、気になるほど伸びていたわけでもなく、今まで自分でカットするなんてこともありませんでした。
面談までに時間もなかったので、クレーターのような頭のまま塾へ向かいました。
色んな緊張の中、塾へ到着。塾長先生が面談して下さいました。
きっと、長男の頭の状態を見てビックリされてるだろうなと思って、「午前中にバリカンで・・・こんな頭になってしまいまして・・・」と、恥ずかしい気持ちをさらけ出して、打ち明けました。
塾長先生は、私たち親子の様子を察知して「ははは・・・」と、明るく笑いに変えて下さって。それで随分緊張が解れ、落ち着いてお話することが出来ましたね。
学校でいじめに遭いとても不安定になっていること、本人の強い希望で中学受験をしたいことなどを、包み隠さずお話しました。
塾長先生は少しの間、言葉を見付けられずにいらっしゃる様子でしたが「そっかぁ。○○君、辛いなぁ・・・。よし、でも、受験頑張ろうな!」と励まして下さって、「はい!」と元気に応える長男に『ここでお世話になろう』そう心に決めたのでした。
眠れぬ夜を何度も過ごし
面談から帰宅し、クレーターになってしまった頭を、出来るだけ目立たない状態にカット。フゥーっとため息が出ました。
夕方、またも悲劇が起こります・・・。何とか整えた髪を、取り返しの付かない状態にまで刈り上げてしまったのです・・・。本当にショックな時、人は声も出ないのかと、身をもって体感・・・。
きっと、学校でのいじめのストレスが、私たちの想像を遥かに超え、彼をここまで追い詰めていたのだと思えてなりませんでした。
4年生の3月から塾に通い始めました。塾には他の学校から通っているお子さんたちがいて、小学校以外の新たな環境が、長男にとって良く作用してくれたらいいなと思っていました。
塾長先生とは折に触れ、塾での様子や小学校での様子など、細かく情報交換をしながら前向きに長男を見守って行きました。
5年生に進級し担任の先生も変わりましたが、いじめがなくなったわけではありませんでした・・・。クラスメートとの言い合いの末、掌を鉛筆で刺される。邪魔だと言われてどかずにでいると(どけと言う言い方が気に入らなかった。だから、抵抗するため、どかなかったと長男)ドアに頭を打ち付けられる、私物を壊される。
その火種は上級生にも移り、病院へ通うような怪我を負って帰ってくることが何度かありました・・・。そんな日の夜は、様子がいつもと違っていましたね。
何となく甘えると言うか、そばから離れたがらないのです。もう寝る時間を過ぎているというのに、リビングの私の近くで寝たいと言いました。風邪を引かせてしまわないように、ベッドへ連れて行きましたが、次の日の朝、目を覚まさないんじゃないかという恐怖に襲われ・・・何度、眠れぬ夜を過ごしてきたか・・・。
いじめのない学校です。安心して通って下さい!
進級してからの大きな変化と言えば、長男に対して繰り返されてきた暴力や嫌がらせを、学校側が『これはいじめである』と認めたことでしょうか。こちらからすれば、今頃?と思ってしまいますが。
校長先生が変わられたことで、それまでガンとして認めようとしなかった学校側が、危機的状況であると認め、一気に動き出したのは事実でした。
いじめを認められた時は、涙が出てきましたね。嬉しくて、嬉しくて・・・。
いじめを受けているのに、なぜ嬉しいの?と思われるかもしれませんが、ご経験のあるお母様、お父様ならきっと、共感して頂けるのではないでしょうか。
これまでは、暴力を受けたとしても「いじめではない」そう言われ続けてきたのです。漸く認められたんだと、ホッとしましたし、心の底から嬉しかったんです。
学校側がいじめと認めたからと言って、全く何も起こらなくなったわけではありませんでした。成績が下がり、勉強やスポーツへの意欲も根こそぎ奪われていきました・・・。それでも、受験したいと言う強い思いが消えることは、ただの一度もありませんでしたね。
少しでもやる気になってくれたらと、中学の説明会に参加することに。
参加者は10組程度。と言うのも、募集定員が30名と『少人数で手厚い教育』を前面に出した中学なのです。
そして、高校の方は私の母校でもありましたから、知っている先生も多くいらっしゃいました。
説明会の中で「この中学は定員30名1クラスのみと、規模は小さいですが、上級生とも仲が良くいじめのない学校ですので、安心して通って頂けると思います」そう、校長先生の挨拶がありました。
長男も私も、この言葉に吸い寄せられるようにして、二人三脚、精一杯受験に向き合いました。そして、一年前のちょうど今頃ですが、無事志望校合格を果たしたのでした。
期待に胸膨らませ、新たなスタートを切ったはずだったのに・・・
4月、大きな通学鞄には希望をいっぱい詰め込んで、ブカブカの制服姿の長男と「たくさん友達作ろうね!」ってドキドキしながら臨んだ入学式。
本当にそうなって欲しかった、そうなると信じていたのに・・・入学式から半月も経つと、学校の話題を口にしなくなっていました。
「友達と話してる時が、一番楽しい!」ピカピカの笑顔で、毎日そう話してくれていたのに・・・。
『何かおかしいな・・・』胸騒ぎのようなものを感じていました。
5月下旬、担任の先生から電話があり「○○君(長男)が、クラスメートから暴力を受けまして・・・」と・・・。
双方の親も交え、事実確認をしたいので、来校して欲しいとのことでした。
『またか・・・』まだ、入学から1か月半しか経っていないのに。『いじめのない学校』その言葉を鵜呑みにしたのは、私たち親子。
いじめのない学校なんて存在するはずがない!ずっと傷付いてきた彼に、そう教え込んで入学させれば良かったの?
希望を持ったところで、現実は甘くないんだよ!って、まだ12歳の多感な時期に諦めることを教えるべきだった?
答えがあるのなら、教えて下さい・・・。どうしてこの子は、いじめに遭うのでしょうか・・・?
そこまで追い詰められてたなんて・・・
繰り返し起こる、クラスメートとのトラブル。暴力や嫌がらせ、私物をゴミ箱に捨てられたり壊されたり・・・。秋頃には、そうしたことが頻発し、長男も言葉で反撃するようになります。
時には、蹴られたために同じように蹴り返したこともあったそうです。学校側の言い分は「両者(複数の男子とトラブルになっていました)、同等である」でした。
同等?クラスの誰一人庇ってくれる人もいない中で、必死に戦っている彼と、いじめをしている人たちとが、同等って・・・。
長男は、担任の先生の勧めで部活を転部もしていました。トラブルが起きている子たちと同じ部だったため、別の部へ移った方が良いのではと。
本人の意思に委ね、トラブルが回避出来るのならと転部させた直後に、トラブルが頻発したのです。
何度も学校へ呼ばれ、トラブルについての事情説明を受けました。長男は、自分から先に手を出すようなことはなく、度重なる嫌がらせに耐えかねて大声で怒鳴り、近くの机などを蹴ったりしたそうです。
クラスメート数人がお喋りしているのを見ると「どうせ俺の文句言ってんだろ!」と怒鳴ったりすることもあったと聞きました。被害妄想かもしれません。でももう、そこまで追い詰めらた状況だったのかと、胸を打ち砕かれる思いでしたね・・・。
トラブルに関わった生徒全員にスクールカウンセラーとの面談が決まり、そしてその後、保護者も面談を受けることになりました。
「○○君はとても繊細で傷付きやすい子。上手く友達と関われるように、そして、学校にも環境を整えてもらえるように、医療機関でアドバイスを受けてみてはどうでしょうか?」というお話でした。
そこに期待してすがるという気持ちになれず、自分の手で何とか守って行かなければ、そんな思いを抱きながら、面談を受けていました。
『友達と上手く関われるようになりたい』
カウンセラーの先生とお話した内容を長男に伝え、どうしたいか、本人の意思を尊重しようと思いました。
彼は「友達と上手く関われるようになりたい」そう言って、受診することを自分の意思で決めました。
どんなに暴力を振るわれても、やっぱり友達を求めてるんだなぁ・・・その思いが痛いくらい胸に突き刺さりましたね。
初診の日、言葉少な長男に「緊張してる?」と、どストレートに聞く私(笑)「緊張してる・・・」と長男。そりゃそうだ!
「大丈夫!学校で上手くやれるように、アドバイスをもらいに行くだけなんだから!!」出来る限り明るく声を掛けました。
クリニックに到着。「入口・・・どこ?・・・」初めてのことで、もう、そんな疑問からスタート・・・。
診察を待つ間、同い年くらいの女の子が数人、私たちの前を通り過ぎて行きました。
『思春期外来に通っている子なんだろうか・・・』そんなことを思いながら、慣れた様子で歩いて行くその子たちの後ろ姿を見送る私。
診察室へ呼ばれ、お医者さんから学校での様子や、今、どんなことが辛いのかなどについて質問をされました。
一生懸命答える長男。足りない部分は、私が捕捉しながら質問に答えて行きます。お医者さんはメモを取りながら、長男の話を丁寧に聞いて下さいました。
とても緊張している様子でしたね・・・。たまたま、機械関係が好きだと私が伝えた所から、将来なりたい職業(IT)の話へと。得意分野だったので、目をキラキラさせながら、先生との会話を楽しんでた長男。
こんな風にして初診は終了し、次回の予約をしてきました。まだまだ情報が少なく、先生もアドバイスするに至りませんでしたので・・・。
帰りの車内「今日は、行ってみてどうだった?」と聞くと「先生に悩みを話せたから、良かったと思う」と。『そう思えのたなら、診察に来たことも、きっと生かせるかな・・・』彼の横顔を見ながら、そんなことを思っていました。
まだこれからも通うことになりそうですが、「友達と上手く関われるようになりたい」長男の願いが叶うように、今後も全力で向き合って行くつもりです。