発達障害と記憶力

「発達障害の人は記憶力がいい」というような事をよくネットで見かけます。発達障害である長男も、記憶力はいい方だと思います。ただし、興味のある事や物だけがいいような気がしています。実際、忘れ物は多いですし、今手に持っていたものがなくなったという事は日常的にある事です。常日頃から私が言っているような事(注意されるような事)などは何度言っても覚えませんし、覚える気もないようです。また、長男は、過去に行った場所や記憶に印象深い場面、特に良かった記憶、楽しかった記憶、逆に激しく怒られた場所や嫌な思いをした場面などは2・3歳からの記憶を今でも持っています。記憶に関して言えば、発達障害でなくても、誰にでも印象深い感情などと結びついている記憶などは、しっかりと覚えていられると思います。また、一度通った道をはっきりと覚えている人も知り合いにいました。ですので、一概に発達障害だから記憶力がいいというわけではないと思いますが、発達障害のいろんな特性が絡み合った結果、記憶力がいいと思われる機会が多いのかもしれません。

写真に撮るように記憶する

長男の場合ですが、例えば缶ジュースを買う時、過去に飲んだ事のあるジュースが自動販売機にあったりすると、「このジュースは○○公園のこの辺のイスに座って飲んだジュースと一緒だね。」と突然、話し始めたりします。次男出産のため、実家へ里帰りしていた時の事、長男2歳半あたりです。実家近くの公園で遊んでいる時に買ってあげたジュースの事なのですが、私はそんな事は覚えておらず、実家の父が撮った写真に写っていたのを何年か後に見せてもらいました。その時、長男にはその写真は見せておらず、私が父からデータとしてもらった写真の中に写っていたのが発覚した時にはびっくりしました。その時の天気や着ていた洋服、私のお腹が大きいなどの2歳ではまだ出産の意味がよくわかっていない状況の中での出来事も話していました。
よく聞く話では、図鑑を丸々覚えてしまう、特定の物の名前、路線図、などがありますが、長男は他にも数字に興味があったので、数字の単位を覚えています。お金が興味のきっかけだとは思いますが、桁が増える事を面白がっていたので、私が単位を紙に書いて壁に貼っておいた所、私には全然覚えられない単位をあっという間に覚えていました。
私が長男の記憶力を使って、買い物前に冷蔵庫の中身をチェックしてもらい、買い物先で「これあったかな?」と確認する事が出来るので、とっても便利です。小学1年の時の担任は、何かもめごとが起きた時に長男に場面の詳細を聞いていました。嘘を言ったりしない上に、子供達の配置や状況、言った言葉などを写真に撮ったように覚えているからだそうです。実際、長男は意識をしなくても覚えようと思えば写真のように覚えられるそうです。この能力を勉強に使っている人の話を聞いた事はありますが、長男の場合は例外なようですね。教科書などは興味がないから記憶出来ないようです。

耳から聞いたものの記憶力

長男は幼少の頃から、絵本を全く読みませんでした。私が毎日、読み聞かせをしていたので、絵本を開く事はあっても読むことはしませんでした。ひらがな、カタカナを覚えても物語を読むことはなく、もっぱら開く本は図鑑だけでした。のちに学習障害がわかり、「文字は読めるが内容理解は出来ない」という事がわかったのですが、耳から聞いたものの記憶力はとてもすごいと思う事があります。
学校で、絵本を読む宿題が出たのですが、長男は読むことが出来ず、私が代わりに読みました。長男は隣に座って見ていたり、少し離れた所で聞いていたりしたのですが、読み終わった後に「どんな話だった?」と聞くと、最初のページから順番に話し始めました。過去に2回、本を読む宿題が出され、一度は短い話の絵本、一度は「エルマーの冒険」という、読み聞かせをするのに1時間近くもかかった本の2冊ですが、どちらも最初から順番に話していました。「エルマーの冒険」については、短い話ではなく、主人公のアイテム(持ち物)も随所に出てくるのですが、この持ち物を最後までしっかりと記憶していて、話のどこに関連してくるのかを楽しみに聞いていたようで、私はとても驚いたのを覚えています。私であれば、この辺でこの持ち物が出てきたな、という事は覚えていても、どんな形でどんな持ち物だったかまでの記憶はないので、必要であれば前のページに戻ったりしながら読むのですが、長男の場合は全て記憶されていました。ですので、クイズのようなものは、多少、問題文が長くても、口頭で言われたものは一度で聞き分け、聞き返す事もなく返答すると驚かれた事もありました。読むことが苦手な分、聞く事が人並以上に発達してしまったのかもしれないと(二次障害なのかもしれないと)一時は気落ちしていたのですが、聞く能力が補てんしているのであれば問題ないと思えるようになりました。

嫌な出来事への記憶力

また、過去の感情に結びついている記憶に関しては、例えば嫌な記憶であれば、のちにフラッシュバックして突然パニックに陥る原因になる事があります。まるで、今、目の前で起きている事のように鮮明に記憶がよみがえってくるようで、発達障害(特に自閉症)とフラッシュバックとパニックは深い関係にあるようです。現実に長男も、夜寝る前になると過去の嫌な記憶(半年以上前の事など)が思い出され、感情も同時によみがえり、泣き出した事も多々ありました。今では、「過去の事」と割り切れるようになったので、パニックになるまでにはいきませんが、夢の記憶なのか現実の記憶なのか、朝、起きた時にわからなくなっている事はたまにあります。成長と共に、また早い段階からの周りの理解と療育的対応によって、長男は落ち着いてきています。
記憶がいいと、いい記憶も悪い記憶も残り、忘れられないという事が障害になってくる事もあります。適度に覚え、適度に忘れられるという事は、生きていく上で必要な事なのかもしれないと長男を見ていて感じます。私のように、必要な事まですっかり忘れてしまえるのは、ある意味、幸せなのかもしれません。

ABOUTこの記事をかいた人

2人の男の子を育てている主婦です。(現在小4と小1) 長男が発達障害のため、ちょっと変わった子育てをしています。 今年から次男が小学校に入ったので、少しずつ自分の時間が持てるようになりました。 そんな私のちょっと変わった子育てのお話を紹介致します。