長男が生まれてから2年くらいは、普通の子育てをしているつもりでした。発達障害という言葉が生活の中に微塵もなかった時代、私にとって初めての子育てはとても大変に思えましたが、どのお母さんもみんな同じように大変だと思っていましたし、年配の方達がそのようにして私達を育ててくれたのだと、ありがたささえ感じていました。
少しずつ、長男が周りの子とは様子が違うと気づき始め、子育て支援センターに相談に行き、発達障害だとわかった後、私はネットや本で発達障害の事をたくさん調べました。まるで受験生のように、一日中、寝ても覚めても頭の中は発達障害の事でいっぱいで、知らない情報を吸い取るように暇さえあればネットで調べ、本を読んでいました。
発達障害と確率という言葉から連想されるもの
ネットでは、知りたい情報も知らなくてもいい情報も同時に目に入ってきますよね。知りたかった情報を調べているうちに、関連されて見えてしまうものの中には、ショッキングな情報もありました。
その中に、「高齢出産だと発達障害児が生まれる確率が高くなる」という情報がありました。
私が長男を出産したのは32歳。その2か月後には33歳になりました。高齢出産は35歳からとされていますが、私は高齢出産の粋に入っていると自分では思っていましたので、かなりの衝撃を受けたのを今でも覚えています。それからは「発達障害と遺伝の確率」や、「出産時の親の年齢と発達障害児が生まれる確率」など、不安にかられていろいろと調べました。仕事ばかりしているうちに30歳が過ぎ、子供が欲しくてもなかなか出来ない時期があり、やっとできた初めての子供の出産がほぼ33歳だった事が原因で、長男は発達障害になったのかもしれない、と、何の根拠もない仮定のもと、負のサイクルに陥っていきました。
調べれば調べる程、発達障害児が生まれる確率と出産時の年齢が関係しているように見えて、その確率の1%はまるで私の事を言われているような気持ちになっていきました。
私のせいで長男は発達障害になってしまった。
私のせいで長男は大変な人生を生きていかなければいけなくなった。
私のせいで・・・・・
と永遠に自分を責め続ける日々を助長するかのように、長男の特性が私を襲ってきました。
遺伝や生まれる確率で発達障害を図らないで
発達障害は生まれつきの脳回路の違いによって、様々な特性が表れてきているだけで、当たり前ですが同じ人間です。「障害」という言葉が不自由な人生をイメージさせてしまっている気がしますが、障害がある事は悪い事でもありませんし、不自由なだけの人生でもありません。
今ではそう思える、と言った方が正しいかもしれませんね。暗闇の中で暗中模索している時は、長男の未来は真っ暗に感じていましたから。
そうは言っても、発達障害児が生まれる確率論はとても気になると思います。実際、私も調べては暗くなり、を繰り返していましたから、もしかしたら納得のいくまで調べてみた方がいいのかもしれないですね。
研究されている方々達の結果は、そのままのものなのでしょう。実際、どのくらいの対象者で統計が取れているのかはわかりませんが、ある一定の枠内と時間軸の中での結果は、結果として出ている通りなのだと思います。
ただ、今だからこそ言える事ではありますが、生まれてきた我が子が発達障害である事に、確率論は必要ありません。雑学として知るのであれば問題ないとは思いますが、そこを気にする必要はないと思うのです。
不安で不安で、先行きがわからない未来が不安で、検索してしまう気持ちはとても良くわかりますが、まずは不安であるという気持ち、未来が不安であるという気持ちをそのまま、なんの理由付けをする事なく、受け入れてみる事が大事な事だと思います。
意識を未来に向けただけで
発達障害を受け入れ、今の現実を受け入れる事が出来れば、意識は未来へ向いていきます。悲観的な事ではなく、今、出来る事に意識が向けられると思います。
発達障害は困りごとも大変な事もたくさんあるでしょう。しかし、発達障害児を育てる、という事は、たくさんの事に気付かせてくれたり、問題の核心に触れたりする機会があったり、生きるとは、人間とは、障害とは、と様々な事を深く考えるきっかけになってくれていると思うのです。
ともすれば、何も考えなくても平凡な日常を過ごしていたかもしれない毎日。周りの芝生がとても良く見えて、うらやましくも見えたりする事もあるでしょう。
どちらがいいのかなど、論じでも意味のない事ですが、私は長男が発達障害である事を悲観的には考えてはいません。脳のしくみはどうする事も出来ませんが、人生の最後までをどう生きるか、少し大げさかもしれませんが、なんとなく時間が過ぎてしまうより、よっぽど子供と向き合って過ごせるというメリットがあると感じています。
自己肯定感が上がる確率を上げる
発達障害児は自己肯定感が低いという話はよく聞きますよね。
考える前に衝動的に行動してしまう事が多かったり、気持ちのコントロールがうまくいかなかったり、努力がないように見えてしまったりする事で、幼少期からたくさんたくさん注意されてしまう事で、自分は何も出来ない、と考えてしまうのも無理はありません。
発達障害児を支える1人の親として、自己肯定感をあげるにはどうしたらいいのかをよくよく考えていた時期がありました。
「受け入れる」と一言で表現しても、実際に受け入れる事は難しいです。どうしたら受け入れた状態になるのか、本当に受け入れられているのだろうか、常に疑問と不安はつきものです。
ですが、私はそれでいいと思うのです。その疑問と不安は、確実に受け入れる体制が整えられ始めていて、受け入れてもらっているという実感が出てくれば、自己肯定感は上がってくると思います。
必ず、言葉や態度に表れますし、喜びにも悲しみにも変化が出てきます。発達障害児が少しずつ成長していくのと同じように、支える側も少しずつ成長していけばいいのではないでしょうか。
その一歩が、1%の確率になり、1%が増えれば確率は上がっていきます。発達障害を持つ親御さんが、自己肯定感を1%上げられたら、「自己肯定感の低い発達障害」という概念は少しずつ変わっていくでしょうね。